おじさんその二胡弾くの?と聞くと、「当たり前だよ、今さっきそこでも弾いてきたよ」となにやら得意げに答えるではないか。じゃあちょっと弾いてよと頼むと、わかったちょっと待てとまずはカバンを横に置き、故居修理に準備していたレンガの上にどっかと座る。
曲は?もちろん二泉映月。調律もなしで早速弾きだす。この際音が標準であるとかリズムが合っているとかは問うまい。ただただ阿炳故居で名も無き(?)おじさんが二胡を弾いているというだけで絵になるではないか。
![]() 阿炳故居の前で二胡を弾くおじさん |
修理中の故居の周りには他の人はいない。二泉映月広場も平日の昼間とあってそうたくさんの人出ではない。ある意味静かな空間にただおじさんの二胡の音色が流れる。数分間弾いたおじさんはどうだという顔でこちらを見る。
聞いてみるといわば二胡の流しみたいなことをしているという。それではと10元札をそっと出し収めてもらう。もちろん遠慮などということは似合わない。阿炳故居の修理や記念館の建設など無錫市内でも大きなニュースになっているから、街中で二胡を弾く人が増えてきたのかもしれない。
残念ながら二胡を弾くだけで、楽器と言葉をうまく合わせた弾き語りという形にはなっていない。かつて阿炳の弾き語りは街中で毎日のように庶民の耳に達していた。そしてその言葉が人々の間を駆けめぐり、あるときは人々を涙させ、またあるときは不正への怒りになっていた。
そんな阿炳の時代とももちろん同じことはできない。しかしとにかく二胡を持ってふらりぶらりと街中を歩く人が増えてくれば、これは無錫もおもしろくなるというものだ。さてさて、次はどんな人に会えるのかな。
