長期旅行者にとって一番気になるのが、「海外での切符の値段」ということになっている。
ところが、もまともな知能がある人がちょっと考えればわかるのだが、海外のある町での未来の切符の値段なんてわかるはずがない。
日本での、半年後の安売り切符の値段が誰にもわからないのだから、まして海外の切符の値段がわかると考える方がおかしい。
ところが、旅行者の噂というものはいい加減なもので、どこが安いここが安いという無責任な話だけが飛び交っている。
で、噂を信じてわざわざお金をかけて、その安いという噂のところへ行ってみても、話の通りに本当に安かったためしがない。
ほんのちょっと安かったとしても、安いと信じた町への移動費用、宿泊費などを考えれば、トータル的に大損をしている場合がほとんどだ。
例えば、昔だと、ギリシアのアテネが安いという話が流れていた。
しかし、僕が何回か行ったとき、あちこち歩いて確かめてみたが、特に目だって安いということはなかった。
また、中米のコスタリカでも切符が安いという話があったが、わざわざ噂の学生旅行社を捜して行ったが、全く安くなかった。
一時期、旅行者が日本から切符を買うために行っていた、香港も今ではちっとも安くないし、バンコクも特に安いということはない。
以前、マレーシアのペナン島が安いという話が流れていたが、いまはそういうこともなくなった。
現在は、イスタンブールが安いという噂もあるが、僕が行ってみたところでは、看板には安いことが書いてあっても、実際の値段はちっとも安くなかった。
時期にもよるけれど、現在一番切符が安いのは日本なんだよね。
それは当然で、旅行者が増えて、航空会社が多く運行をしていれば、いろいろ規制があるとしても、そこには当然競争原理が働くからだ。
今では長期旅行者の間で、東欧が安いという話が流れている。
アジア横断をして、イスタンブールからヨーロッパへ向かう長期旅行者は、西欧の物価が高いので、東欧の日本人宿にたむろして、その理由を、切符が安いからと言い訳しているようだ(笑)。
たいして面白くもない東欧の町の日本人宿にたむろして「ヨーロッパへ来た」と傷を舐めあう人たちが多いようだね。
そんな意味のないことをするより、レールパスでも買って、ほとんど列車で寝て、ヨーロッパ中を走り回った方がずっと面白い。
ヨーロッパを鉄道で走り回るのが基本だし、話のネタになる。
だが、そんな根性のある旅行者は、もともと東欧の日本人宿なんかに長居するはずがない(笑)わけだ。
しかもその、切符が安いという噂も、どうも怪しいようだ。
僕の友人は、ハンガリーでニューヨークまで150ドルの切符を買ったと言っていたが、他の人が行ったらそんなキップは売ってなかったという。
確実な話では、僕はカイロからニューヨークへの150ドルの片道切符を、買ったばかりの人から、確かに見せてもらったことがある。
しかし、それ以降、そういう話は聞かない。
これは、最初から全くウソの話ではないのだろうが、状況が変わって安い切符が買えなくなるのは、不思議でもなんでもない。
成田からロサンジェルスの往復切符は、実際、東京で2万5千円というのがあった。
しかし、誰でも知っているように、その切符は「誰もが、いつでも買える」わけではない。
もともと切符の値段の話に限らず、旅行者の話というのは、どんどん膨らんで、大げさになっていくものだ。
だから、安い切符の話は、旅行者の間で伝えられるうちに、さらにますます安くなっていく。
つまり旅行者の「どこどこでは切符がメチャ安い」などという話を、信じる方がおかしいわけだよ。
それを言うならば、「旅行者の話なんか信じる方が馬鹿」という究極の真実にたどり着くわけだねどさ(笑)。
例えその安い切符が存在したとしても、席が取れないということはごく普通のことだ。
すぐには飛べなくて数週間後ということになる場合も多い。
数週間後まで安い切符を待っているうちに、滞在費の方がずっと多くかかるのが普通だ。
例えば、ロンドンやパリでも、たくさんの有名な信用できる安売り切符屋(trailfinderとかね)はある。
でも、すぐに飛ばないと意味がない。
だって、ロンドンやパリの滞在費はなかなか高いので、滞在しているうちに、切符の数万円の差は、宿泊費や食費で、あっという間になくなってしまうからだ。
宿泊費の馬鹿高いニューヨークで安い切符を一週間も待っていたら、それはちっとも安い切符にはならない。
かといって、滞在費の安い東欧の町で一週間も安い飛行機の出発を待っていたら、もともと東欧の町なんてどれも似たようなもの。
2日もあれば見てしまえる、つまらないところだらけだ。
後はただ何もすることがなく、だらだらと無駄な時間を潰すだけだ。
逆に、滞在費は高くても、ロンドンやパリならば、いくらでも観光名所があるので時間が潰せるし、長くいてもそれなりに意味がある。
ということは、切符の値段自体は、海外旅行にとって、それほどの重要性はないんだよ。
つまり、海外個人旅行では、行きたいところへ行って、そこで切符の値段を聞いて、それがあまり高くないならば、そこから帰ってくればいいだけなんだ。
実際、世界中の切符の値段は、ワイワイ言うほど違ってはいない。
例えば、僕が夏の終わりにベイルートで成田への片道航空券を調べたところ、航空会社によって、730ドルから、765ドル、805ドル、930ドル、950ドルという値段だった。
しかしこのとき、各社一週間先まで満席で、すぐに飛べるのは(オフィスで特別にアレンジしてくれるという怪しげな)アエロフロートの950ドルだけだった。
ベイルートもたいして見るところはないので、こんなところで一週間も時間を潰すのでは、意味がない。
そこで、僕はキプロスへ飛んで(片道141ドル)、ラルナカ、ニコシアと見物をした。
そのあと、キプロスからルフトハンザでフランクフルト経由成田までの片道切符を360キプロスポンド(約7万2千円)で買った。
トータルで9万円程度かかったわけだが、めったに行けない(もう二度と行くことはないだろう)キプロスを見れたわけだ。
これは、一週間もベイルートで滞在費を使って時間を潰して8万円程度の切符で帰ってくるよりも、よかったと思っている。
僕の体験では、世界中で、日本への片道航空券は、高いところで10万円ちょっと、安いところで5万円。
こう考えておけば、そう違ってはいない。
高い10万円を覚悟していれば13万円でも我慢できるものだし、安くて5万円と考えていれば、3万円で帰ってこれればうれしくてたまらないものだ。
切符の値段はこの程度以上を考える必要はない。
僕は夏の終わりの8月20日ころに、バンコクから成田への片道切符を8100バーツ(約2万4千円)で買って帰ってきたことがある。
僕が買ったのが一番安かった(もっと安い時期には8000バーツ以下であるようだ)。
この安い切符も、時期が時期なので、普通は満席で予約が入らない。
その同じ時期だと、別の航空会社の片道1万5千バーツを超えた、つまり5万円程度しか予約は入らなかったんだ。
バンコクから日本への片道切符というごくありふれたものでさえ、同じ時期でも、2万4千円から5万円と、値段は大きく違っているのだから、他の国での正確な切符の値段を言えるはずがない。
また、旅行代理店の前の看板に、安い切符の値段が書いてあったとしても、そんなものがあてにならないのは常識だ。
特に米国では、新聞広告でも、往復切符の値段を半分にして、片道切符の値段として表示してある場合が多い。
ロサンジェルスのダウンタウンの旅行代理店の看板では、中米や南米の都市へ170ドル、280ドル、350ドル、など書いてあるが、話を聞くと、往復切符はそれの2倍、片道切符はそんな安い値段では買えない。
だから、旅行代理店の看板に書いてある切符の値段なんかは、最初から参考にならないんだ。
海外での切符の値段なんていうものは、最初から気にしても、意味がないんだよ。
それでいて、世界中に、非合理的に高い航空券の場所なんて存在しない。
日本人旅行者が恐れるように、IATAの正規運賃でしか切符を買えない場所なんて、日本の空港で直接買うノーマル運賃以外にはほとんどない。
海外では、航空会社が直接安い切符の値段を出していて、旅行代理店がそれを販売している。
だから、どの町でも、町を歩いて見つけた適当な旅行代理店で2~3軒、切符の値段を聞いてまわれば、それで十分に安い切符は買える。
どの旅行代理店が安いと言う情報を集めるよりも、自分で歩いてまわれば、安いところは見つかるんだよ。
安い切符の噂に惑わされて、行きたくもないところへわざわざ行って、旅先の貴重な時間を無駄遣いするくらいなら、何も考えずに、帰りたいときに、たまたまいた場所から帰ってくればいいだけなのさ。
またそれが、海外個人旅行の本質なんだよね。
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